注文が増えて手が回らない。その時点で雇うと利益が消えます。人を増やす前にやること、そして増やすかどうかを判断する計算式を解説します。

結論:「忙しいから雇う」ではなく「設計しきっても溢れるから雇う」

注文が増えて手が回らなくなると、すぐに人を増やしたくなります。ただ、その判断が早すぎると、増えた利益がそのまま人件費に消えます。

遊休厨房を使うデリバリーは、「家賃も人件費も増やさない」ことが前提です。ここに人件費が乗った瞬間、利益の構造が変わります。だからこそ、雇うかどうかは慎重に、そして数字で判断する必要があります。

順番はこうです。まず実際に何件さばけているかを測る。次に仕込みの前倒しで、今の人数で回せる量を増やす。そこまでやってもなお溢れるなら、そのときに雇う。

株式会社8Deliciousの関根和樹です。17歳から飲食の現場に立ち、今も自分の店を経営しながら、厨房を持つ事業者の支援をしています。

こんな方に向いています

✅ 注文が増えてきて、手が回らなくなってきた

✅ 人を雇うべきか迷っている

✅ 雇ったら利益がなくなるのではと不安

✅ 今の人数でどこまで回せるのか把握していない

ステップ1:実際に何件さばけているかを測る

感覚ではなく、実際の数字を取ります。2〜3週間、次の3つを記録してください。

  • 空いている時間帯に、実際に何件入ったか(平均と、一番多かった日)
  • 質を落とさずに出せた上限は何件だったか
  • 曜日や時間帯で、どこに偏っているか

ここで出た数字が、判断の出発点になります。「なんとなく忙しい」では判断できません。

ステップ2:人を増やす前に、設計で余力を作る

測った結果、上限に近づいているとしても、まだ雇うのは早いです。先に、仕込みの前倒しで回せる量を増やせないか試してください。

当日の作業を「調理」から「組み立て」に変えるだけで、同じ人数でさばける件数は大きく変わります。まとめて火を入れる、小分けにして待機させる、容器を手元に並べる。こうした工夫を先にやりきります。

ここを飛ばして雇うと、本来なら人件費なしで増やせたはずの利益を、自分から削ることになります。

ステップ3:それでも溢れるなら、計算して判断する

前倒しをやりきっても、無理なく回る線を恒常的に超えるようなら、増員を検討します。判断は次の計算でできます。

超過分の貢献利益 - 増える人件費 = 増える手残り

例えば、1件あたりの貢献利益が675円で、今の人数で回せる線を1日10件超えているとします。

  • 超過分の貢献利益:675円 × 10件 = 6,750円/日
  • 増える人件費:3時間 × 時給1,200円 = 3,600円/日
  • 増える手残り:6,750円 - 3,600円 = 3,150円/日(月約9.5万円)

これならプラスなので、雇う判断ができます。逆に、超過分の貢献利益が人件費を下回るなら、雇わずに単価を上げるほうが先です。

※金額はすべて例です。自分の数字で計算してください。

人を増やす以外の選択肢

増やすのは「人」だけではありません。

  • 受け付ける時間を増やす — 別の空き時間帯を開ける
  • 仕込みだけ短時間の人に頼む — フルタイムで雇わない
  • 単価を上げる — 件数を増やさずに、1件を厚くする

特に3つ目は、手を増やさずに利益を伸ばせる方法です。人を雇う前に、まずこちらを検討してください。

雇った後の計算を忘れない

人を雇うと、1件あたりの手残りは人件費のぶん下がります。「デリバリーの利益は貢献利益率45%」という数字は、追加人件費がゼロの前提で成り立っています。

雇った後は、「1件の貢献利益 × 件数 - 追加人件費」で、実際に残る額を計算し直してください。ここを更新しないまま以前の数字を使い続けると、実態とずれていきます。

私の実例:人を増やさない前提で、貢献利益率約45%

私は自分の店でデリバリーの利益設計をやりきり、貢献利益率約45%を確認しました。貢献利益率とは、食材原価・梱包費・プラットフォーム手数料をすべて差し引いた後に残る利益の割合です。本業のスタッフが空き時間に対応したため、追加の人件費は発生していません。1注文あたりの追加作業は、実測で5〜10分でした。

1食の価格1食あたりの貢献利益(45%)1日30食月の貢献利益(30日)
1,000円450円13,500円約40.5万円
1,500円675円20,250円約60.8万円

※貢献利益率45%、追加の家賃・人件費ゼロを前提にした試算です。1日30食は、1件5〜10分として合計3〜4時間ほどの作業量になります(仕込みを前倒しした場合)。実際の利益は、価格・原価・手数料の条件によって変わります。

この数字が成り立っているのは、人を増やしていないからです。同じ件数でも、人を雇えば手残りは変わります。

よくある質問

Q. 何件を超えたら雇うべきですか?

一律の数字はありません。設備、商品、動線で変わります。だからこそ、自分の店で「無理なく回る線」を測ることが先になります。

Q. 繁忙期だけ人が足りません。

通年で雇うより、忙しい時間帯だけ短時間で入ってもらう形が向いています。仕込みだけ手伝ってもらう、という分け方も有効です。

Q. 自分が無理をすれば回せますが、雇うべきですか?

回せるかどうかではなく、続けられるかどうかで判断してください。体を壊したら元も子もありません。空いた時間を取り戻すために始めたのに、時間も体力も削られるなら、本末転倒です。

Q. 雇った後、利益が減ってしまいました。

増えた件数の貢献利益が、増えた人件費を下回っている状態です。単価を上げるか、受け付ける時間を見直して、人件費に見合う件数を確保してください。

まとめ:順番を守れば、判断は難しくない

✅ まず2〜3週間、実際の件数を測る

✅ 人を増やす前に、前倒しで回せる量を増やす

✅ それでも溢れるなら、超過分の貢献利益と人件費を比べる

✅ プラスなら雇う。マイナスなら単価を上げるほうが先

✅ 雇った後は、手残りを計算し直す

「忙しいから雇う」は感覚の判断です。「超過分の利益が人件費を上回るから雇う」が、数字の判断です。

8Deliciousでは、この計算を一緒に行い、雇うかどうかの判断まで伴走しています。お気軽にご相談ください。

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関根和樹(株式会社8Delicious 代表取締役)
17歳から飲食の現場に立ち、飲食店経営とコンサルティングに従事。5年で139名の事業者を支援。自身の店で遊休厨房を使ったデリバリーを実証し、貢献利益率約45%を確認。
主な事業:コンサルティング/飲食業/弁当事業/ケータリング事業/広告運用事業/不動産事業

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