
新規出店が閉じたいま、厨房の空き時間をどう収益化するか。ブランドを借りる場合と自前で持つ場合の数字を比べ、このモデルが成立する条件を明確にします。
2026年7月1日以降、中小規模・個人営業のバーチャルレストランは新規出店ができなくなりました。
この状況で、厨房の空き時間をどう収益化するか。数字と実務で整理します。
株式会社∞Deliciousの関根和樹です。17歳から飲食の現場に立ち、今も自分の店を経営しながら、厨房を持つ事業者の支援をしています。自分の店でもデリバリーの利益設計を実証しました。
前提:数字はどう変わったか
まず、現在の実コストを確認します。
手数料は税込38.5%です。よく「35%」と表記されますが、これは税抜です。課税事業者であれば仕入税額控除により実質35%に戻りますが、免税事業者や簡易課税を選択している場合は、38.5%がそのまま負担になります。
ホテル・旅館・セントラルキッチン・給食委託はほぼ課税事業者なので35%。個人店や小規模の惣菜製造では38.5%。 分けて計算する必要があります。
この区分に触れている支援会社のサイトを、私はまだ一つも見つけていません。
ブランドを借りる場合と、自前で持つ場合
月商135万円(客単価1,500円×30注文/日)で比較します。
| 自前で持つ | ブランドを借りる | |
|---|---|---|
| プラットフォーム手数料 38.5% | 51.98万円 | 51.98万円 |
| 原価・包材 | 27.00万円(20%) | 33.75万円(25%) |
| ロイヤリティ 10% | 0円 | 13.50万円 |
| サービス利用料 | 0円 | 3.30万円 |
| 貢献利益 | 56.00万円 | 32.47万円 |
| 人件費 | 0円 | −13.70万円 |
| 手残り | 56.00万円 | 18.77万円 |
| 売上に対する率 | 41.5% | 13.9% |
差は月37.2万円、年間で約447万円。
人件費の前提を書いておきます。自前の場合は、固定給の厨房スタッフが空いている時間に対応するため、稼働率が上がっても支払う人件費は変わりません。一方、ブランドを借りる場合は、本部が用意したメニューに合わせた別のオペレーションになるため、専任の手が必要になります。月900注文(30注文×30日)を1注文7分、時給1,300円で計算すると13.7万円です。
つまり、この差のうち16.8万円はロイヤリティと利用料、13.7万円は人件費です。どちらも、自前で持てば発生しません。
ただし2026年7月以降、借りる側の選択肢そのものが、中小・個人には開いていません。この比較が当てはまるのは、規模要件を満たす事業者か、すでに運営中の店舗だけです。
なぜ30注文なのか
理由は2つあります。
BPMの評価を確実に上回る
直近84日の平均注文数45件未満、という足切りの基準に対して、月間約900件の注文は桁が違います。選別の対象にならない水準に、最初から置いておく。これが1つ目です。
人件費の扱いが変わる分岐点でもある
1注文あたりの追加作業は、実測で5〜10分です。30注文なら1日2.5〜5時間になります。
これは「手の空いた時間にちょっと」という量ではありません。パート1名の半日分に相当します。
個人店で時給のスタッフに対応させれば、月9.75〜19.5万円の人件費が乗ります。貢献利益56万円から引くと、36〜46万円まで落ちます。
しかし、固定給のスタッフを抱える施設では、この人件費が発生しません。
ホテル、旅館、セントラルキッチン、給食委託の厨房スタッフは月給制です。厨房の稼働率が5割から7割に上がっても、支払う人件費は1円も変わりません。個人店のアルバイト(変動費)とは、コスト構造そのものが違います。
つまり、こうなります。
1日30注文は、個人店では人件費が乗る。固定給のスタッフを抱える施設では乗らない。
このモデルは、施設でしか成立しません。
誰にでも勧められる話ではありません。むしろ逆で、当てはまる相手が明確に限られています。厨房があって、人が固定給で、空いている時間がある。この3つがそろっている事業者だけです。
※この記事の41.5%は、手数料を税込38.5%として計算した数字です。課税事業者で税抜35%として計算する場合は、もう少し高くなります。
2026年7月以降に取れる設計
① 既存店アカウント内でのメニュー展開
別ブランドでの新規出店は塞がれましたが、実店舗のアカウントにデリバリー向けメニューを追加することは制限されていません。屋号を立てる自由度は失われる代わりに、実店舗の信用をそのまま乗せられます。
プラットフォームが向かっている「実店舗中心」という方向とも一致するため、中長期でも安全度が高い選択です。
② プラットフォームの分散
出前館は同様の規制を出していません。手数料率はUberより高めで、入金のサイクルも遅いですが、ファミリー層や中高年層に強く、LINEからの導線を持っています。
Rocket Nowは2025年1月に始まった新興で、ユーザー側の送料・サービス料を無料にする戦略を取っています。加盟店を集めたい段階にあるため、条件面で交渉の余地が残っています。
一本足をやめる。 これが今回の件から引き出せる、最も実務的な教訓です。
③ プラットフォームを通さない販路
法人向け、医療機関向けの弁当やケータリング。自社サイト、LINE、電話での直販。手数料38.5%がかからず、規約変更の影響も受けません。
立ち上がりは遅いです。デリバリーのような即効性はありません。ですが、誰の許可も要りません。
デリバリーで作った運用の型は、そのままこちらに載せ替えられます。順番としては、デリバリーで型を作り、それを直販や法人販路に展開するのが現実的です。
何が資産として残るか
今回の件で、はっきりしたことがあります。
プラットフォーム上の屋号、レビュー、評価、露出。これらは全部、決定権が向こうにあります。積み上げても、向こうの方針が変われば扱いが変わります。
一方で、残るものもあります。
- 厨房の空き時間を回す運用設計
- それを回せるようになったスタッフの技術
- 原価・包材・提供時間の型
- 直販の導線
- プラットフォームを介さない販路
これらは、どのプラットフォームが何を発表しても消えません。販路が変われば、同じ型を別の販路に載せ替えるだけです。
デリバリーは、その型を最も早く立ち上げられる入口として優秀です。ただし入口であって、建物ではありません。
こんな方に向いています
✅ ホテル・旅館・セントラルキッチン・給食委託で、厨房に稼働していない時間がある
✅ 厨房スタッフが固定給で、稼働率を上げても人件費が増えない体制
✅ 7月の規制で、検討していたデリバリー展開が止まってしまった
✅ プラットフォーム一本ではなく、複数の販路で設計したい
✅ 売上ではなく貢献利益で判断したい
✅ 数年後に、自社の資産として残るものを作りたい
∞Deliciousでは、この条件に当てはまる施設に絞って支援しています。「うちの厨房と人員で、月にいくら見込めるのか」を一緒に計算するところから始めますので、お気軽にご相談ください。
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※試算の前提について
手数料は税込38.5%(課税事業者は仕入税額控除により実質35%)。ロイヤリティ10%・サービス利用料月33,000円は公開されている料金の一例で、条件は各社で異なります。原価・包材、客単価、1注文あたりの作業時間は、すべて自社の実測値です。本記事の数字は試算であり、成果を保証するものではありません。規制の適用範囲については、Uber Eats公式および正規代理店への確認をおすすめします。
関根和樹(株式会社8Delicious 代表取締役)
17歳から飲食の現場に立ち、飲食店経営とコンサルティングに従事。5年で139名の事業者を支援。自身の店で遊休厨房を使ったデリバリーを実証し、貢献利益率約45%を確認。
主な事業:コンサルティング/飲食業/弁当事業/ケータリング事業/広告運用事業/不動産事業


