
綿密な事業計画より、小さく出して測るほうが早い。それでも最初に決めておくべき数字と、走りながら上書きしていく進め方を解説します。
結論:計画は「決めきる」ものではなく「上書きしていく」もの
新しい事業を始めるとき、細かい計画を作り込んでから動きたくなります。ただ、デリバリーに関しては、それはおすすめしません。
理由は単純で、始める前には分からないことが多すぎるからです。自分の商圏で何件注文が入るか。今の人数で何件さばけるか。どの商品が選ばれるか。これらは、出してみないと分かりません。
そのかわり、出店費用も家賃も増やさずに始められるのがこの事業の利点です。小さく出して、2〜3週間の実データで計画を上書きしていく。この進め方が一番速く、一番損が小さくなります。
ただし、始める前に決めておくべきことはあります。それが下で説明する5つです。
株式会社8Deliciousの関根和樹です。17歳から飲食の現場に立ち、今も自分の店を経営しながら、厨房を持つ事業者の支援をしています。
こんな方に向いています
✅ 新規事業として、社内や銀行に説明する必要がある
✅ 何をどこまで決めてから始めるべきか分からない
✅ 計画を作り込みすぎて、動き出せていない
✅ 始めたが、行き当たりばったりになっている
始める前に決める5つのこと
1. 使う厨房と、空いている時間
どの厨房を、何曜日の何時から何時まで使うか。これを書き出します。
委託先の施設の厨房を使う場合は、契約上そこで別の事業をしてよいかを必ず確認してください。ここを飛ばすと、本業の取引に影響が出ます。
2. 配達できる範囲に、注文する人がいるか
アプリで自分の住所を入れて、周辺にどんな店が出ているかを見ます。住宅やオフィスが少ない立地では、注文が集まりにくいことがあります。
ここで成り立たないと判断したら、始めないことも正しい選択です。
3. 1件あたりの貢献利益
売価から、食材原価・梱包費・プラットフォーム手数料を引いて、1件でいくら残るかを出します。梱包費は、容器・フタ・袋・箸・タレのカップまで全部数えてください。
この数字が計画の土台になります。
4. 追加でかかる固定費
遊休厨房を使う前提なら、家賃も設備費も増えません。今いるスタッフの空き時間で回すなら、人件費も増えません。
もし人を増やす前提なら、その人件費は別に計算します。「増える貢献利益が、増える人件費を上回るか」で判断してください。
5. 目標の金額と、そこから逆算した件数
「月にいくら残したいか」を決めて、1件あたりの貢献利益で割ります。
例えば月40万円を目標にして、1件あたりの貢献利益が450円なら、月に約890件、1日あたり約30件です。これが、空き時間で現実的にさばける数かどうかを確認します。
決めなくていいこと
逆に、始める前に決めきらなくていいものもあります。
- 正確な注文数の予測 — 出してみないと分かりません
- 1年分の売上計画 — 最初の1か月のデータで全部変わります
- メニューの最終形 — 反応を見て入れ替えていくものです
- 雇用計画 — 実際に溢れてから判断します
ここを机上で精緻に作り込んでも、まず当たりません。時間の無駄になります。
走りながら上書きする
出してから2〜3週間で、次の数字が手に入ります。
- 実際に何件入ったか(曜日・時間帯ごと)
- 今の人数で、無理なく何件さばけたか
- どの商品が選ばれたか
- 実際の平均単価(オプションやセットを含めた金額)
この4つが出たら、最初に立てた計画を上書きします。特に4つ目の平均単価は重要です。計画では主力商品1品で計算していても、実際は安い商品やセットが混ざるので、1件あたりの平均は変わります。
対外的な資料に載せる数字は、この実際の平均で出してください。 一番条件のいい商品だけの数字を全体の数字として使うと、後で「話が違う」となります。
私の実例:計算の土台になる数字
私は自分の店でデリバリーの利益設計をやりきり、貢献利益率約45%を確認しました。貢献利益率とは、食材原価・梱包費・プラットフォーム手数料をすべて差し引いた後に残る利益の割合です。本業のスタッフが空き時間に対応したため、追加の人件費は発生していません。1注文あたりの追加作業は、実測で5〜10分でした。
| 1食の価格 | 1食あたりの貢献利益(45%) | 1日30食 | 月の貢献利益(30日) |
|---|---|---|---|
| 1,000円 | 450円 | 13,500円 | 約40.5万円 |
| 1,500円 | 675円 | 20,250円 | 約60.8万円 |
※貢献利益率45%、追加の家賃・人件費ゼロを前提にした試算です。1日30食は、1件5〜10分として合計3〜4時間ほどの作業量になります(仕込みを前倒しした場合)。実際の利益は、価格・原価・手数料の条件によって変わります。
この表は計画の出発点です。実際に出したら、自店の数字で上書きしてください。
よくある質問
Q. 銀行や本社に説明する資料が必要です。
上の5つ(使う厨房、配達圏、1件あたりの貢献利益、追加の固定費、目標と件数)を並べれば、必要な要素は揃います。追加投資がほぼゼロである点は、説明する側にとって強い材料になります。
Q. 初期費用は本当にかかりませんか?
厨房と人がすでにある前提なら、かかるのは梱包材と、必要に応じた写真の撮影くらいです。ただし、新しく設備を買ったり人を雇ったりすれば、その分は当然かかります。
Q. どのくらいの期間で判断すればいいですか?
2〜3週間で最初のデータが出ます。そこから改善して、3か月で続けるかどうかを判断するのが現実的です。
Q. うまくいかなかったらどうなりますか?
固定費を増やしていなければ、やめても損失はほとんどありません。ここが、物件を借りて始める新規事業との最大の違いです。
まとめ:5つ決めて、あとは走りながら
✅ 使う厨房と空いている時間(契約の確認を忘れずに)
✅ 配達できる範囲に、注文する人がいるか
✅ 1件あたりの貢献利益(梱包費まで含めて計算)
✅ 追加でかかる固定費(増やさないのが前提)
✅ 目標金額から逆算した件数
✅ 残りは、2〜3週間の実データで上書きする
作り込んだ計画より、小さく出して測るほうが早く正確です。固定費を増やさない形なら、試すこと自体のリスクもほとんどありません。
8Deliciousでは、この5つを一緒に整理して、出すところまで支援しています。お気軽にご相談ください。
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関根和樹(株式会社8Delicious 代表取締役)
17歳から飲食の現場に立ち、飲食店経営とコンサルティングに従事。5年で139名の事業者を支援。自身の店で遊休厨房を使ったデリバリーを実証し、貢献利益率約45%を確認。
主な事業:コンサルティング/飲食業/弁当事業/ケータリング事業/広告運用事業/不動産事業


