支援会社が公開している収益シミュレーションに、税込の手数料・ロイヤリティ・返金分を足すとどうなるか。すべて公開情報だけで計算しました。

デリバリー支援会社のサイトには、収益シミュレーションが載っています。

私は最近、ある大手支援会社の記事をひと通り読みました。Uber Eatsの正規代理店として最高ランクを3年連続で獲得している会社で、記事の質は正直かなり高いです。手数料の話も、容器コストの話も、逃げずに書いてあります。

だから、この記事は批判ではありません。彼らが公開している数字を、そのまま最後まで足してみた、という話です。使うのは彼らのサイトに書かれている数値だけで、私の推測は入れません。

株式会社8Deliciousの代表、関根和樹です。私は17歳から飲食の現場に立ち、今も自分の店を経営しながら、厨房を持つ事業者の支援をしています。

公開されているシミュレーション

その会社が公開している、3ブランド同時運営のモデルがこれです。

項目金額
月商(3ブランド合計)1,000,000円
デリバリー手数料(35%)▲350,000円
食材費(原価率28%)▲280,000円
容器・包材費(4%)▲40,000円
追加人件費▲60,000円
その他▲20,000円
営業利益250,000円(利益率25%)

好感が持てるのは、追加人件費を6万円、きちんと計上している点です。人件費を書かない支援会社は多くあります。ここを書いているのは誠実だと思います。

そのうえで、3つだけ足し算を続けてみます。

足し算①:手数料35%は税抜である

同じサイトの別の記事に、手数料の詳しい解説があります。そこで扱われている「35%」は税抜の数字です。実際の請求は、消費税を含めて**38.5%**になります。

月商100万円なら、3.5万円の差です。

ここは正確に補足しておく必要があります。課税事業者であれば仕入税額控除で戻ってくるので、実質の負担は35%に戻ります。丸ごとかぶるのは、免税事業者と簡易課税を選択している事業者です。

つまりこのモデルは、「読者が課税事業者である」という前提が省略されています。多くの個人店や小規模事業者は、ここで3.5ポイント分を余計に負担します。

営業利益 250,000円 → 215,000円

足し算②:ロイヤリティの行がない

この表には、ロイヤリティの項目がありません。

これは不思議なことではなく、このシミュレーションは「自分でブランドを立ち上げた場合」の計算だからです。表として間違ってはいません。

ただし、同じ記事の後半では自社のブランド提供サービスが紹介されていて、そこから問い合わせる導線になっています。読者が実際に選ぶのは、この表のモデルではなく、ブランドを借りるモデルのほうです。

ブランド提供型の料金は会社によって異なり、この会社は公開していません。業界で公開されている一例では、ロイヤリティが売上の10%、サービス利用料が月33,000円となっています。

仮にこの水準を当てると、月商100万円で13.3万円。

営業利益 215,000円 → 82,000円

足し算③:返金分は、同じサイトの別記事に書いてある

この会社は「デリバリーの隠れコスト」を扱った記事も書いていて、そこに重要な指摘があります。クレームに対してプラットフォームの返金ポリシーにもとづき売上から天引きされることがあり、月間注文数の1〜3%程度が返金の対象になる店舗も珍しくない、という内容です。

いい指摘だと思います。実際そのとおりです。

ただ、この1〜3%は収益シミュレーションの表には入っていません。記事が別々なので、読者が両方読まない限り気づきません。

月商100万円なら、1〜3万円。

営業利益 82,000円 → 52,000〜72,000円

足し算の結果

公開されている表足し算後
月商100万円100万円
営業利益25.0万円5.2〜7.2万円
利益率25%5〜7%

25%が、5〜7%になりました。

繰り返しますが、私は一つも数字を作っていません。 税込に直し、公開されている一例のロイヤリティを当て、同じ会社が別記事で書いた返金分を入れただけです。

差が出た理由は単純で、それぞれの数字が別々の記事に置かれているからだと思います。1本の表にまとめて計算する機会が、どこにもなかった。

もうひとつ、噛み合っていないところ

同じ会社は、複数ブランドの同時展開を勧めています。1つの厨房から複数ブランドを運営でき、新しいブランドを追加するだけで収益源を広げられる、と。

これはモデルとして正しいです。実際そのとおりでした。

ただし2026年3月から、Uber Eatsのバーチャルレストランの維持基準が変わりました。月45件の注文を下回り続けると、店舗が非表示になります。

同じ会社は、デリバリーで安定するのは単価1,000〜1,500円のメニューだとも書いています。この前提で月商100万円を3ブランドに割ると、1ブランドあたり月22〜33件。

維持基準の月45件を、下回ります。

合計では成立しているモデルが、ブランド単位では基準を割る。ブランドを増やすほど1つあたりの注文は薄まるので、これは構造的な問題になります。

指摘したいのは会社の姿勢ではなく、ルールが変わったのに、モデルのほうが追いついていないということです。2026年3月以前なら、このモデルは完全に正しかった。

数字が分かれていると、誰も足せない

ここまで見てきて思うのは、悪意の問題ではない、ということです。

手数料の記事、隠れコストの記事、収益シミュレーションの記事、維持基準の記事。全部ちゃんと書いてあります。書いてあるのに、1枚の表になっていません。

検索対策の都合で記事を分けると、こうなります。読者は自分が検索した1本しか読まないので、足し算をする人が誰もいなくなる。

選ぶ側がやるべきことは、1つだけ

提案された収益シミュレーションに、この4行が入っているかを確認してください。

✅ 手数料は税込か税抜か(自社が課税事業者か免税事業者か)

✅ ロイヤリティ・サービス利用料の行があるか

✅ 返金・キャンセル損が入っているか

✅ 人件費は何時間×いくらで計算されているか

この4つを聞いて全部答えられる会社なら、信用していいと思います。答えられないなら、その会社が悪いのではなく、その表がまだ完成していないだけです。完成させてから判断すればいい。

私の数字も、同じ基準で出しておく

人の数字を足しておいて自分のを出さないのはフェアではないので、書いておきます。

自分の店の厨房でデリバリー専用ブランドを6ヶ月運営しました。月商平均150万円。 初月からこの数字ではなく、6ヶ月の平均値です。

貢献利益率は41.5%。手数料は税込38.5%で引いています。ロイヤリティはゼロ(自前のブランドなので発生しません)。原価・包材は実測20%です。

この41.5%、最初は「45%」で出していました。手数料を税抜35%で計算していたからです。人の税抜表記を指摘しておいて、自分も同じ穴に落ちていました。 引き直して41.5%になったので、下がったほうを使っています。

そして条件をはっきりさせておくと、この41.5%に人件費は計上していません。発生しないからです。

対象をホテル・旅館・セントラルキッチン・給食委託に絞っているのは、そのためです。これらの厨房スタッフは固定給で、稼働率が5割から7割に上がっても、支払う人件費は1円も変わりません。時給のスタッフを追加で雇う個人店とは、コスト構造そのものが違います。

つまりこのモデルは、人件費が変動費にならない事業者を前提に設計されています。 逆に言えば、それ以外の業態では成立しません。

同じ4行で、並べてみる

比べやすいように、先ほどの4行(税込か・ロイヤリティ・返金分・人件費)を入れた状態で並べます。月商は135万円(客単価1,500円×30注文/日)に揃えました。実績の150万円ではなく、控えめな数字で計算しています。

ブランドを借りる自前で持つ(施設)
月商135.0万円135.0万円
手数料(税込38.5%)−51.98万円−51.98万円
原価・包材−43.20万円(32%)−27.00万円(20%)
ロイヤリティ(10%)−13.50万円0円
サービス利用料−3.30万円0円
返金・キャンセル損(2%)−2.70万円−2.70万円
追加人件費−8.10万円0円(固定給)
手残り12.22万円53.32万円
利益率9.1%39.5%

借りる側の原価32%と人件費8.1万円は、冒頭のシミュレーションの比率(食材28%+容器4%、人件費は月商比6%)をそのまま当てています。返金分は1〜3%の中間の2%で置きました。

自前の側の人件費がゼロなのは、固定給のスタッフが空いている時間に対応するからです。この前提が崩れる事業者では、この数字にはなりません。

差は月41.1万円。年間で約493万円です。

こういう条件を全部書いたうえで比べてもらうのが、一番早いと思っています。

こんな方に向いています

✅ 支援会社から収益シミュレーションを提示されていて、検算したい

✅ 自社が課税事業者か免税事業者かで、手数料の実負担が変わることを知らなかった

✅ 複数ブランド展開を提案されているが、維持基準との整合が気になる

✅ ホテル・旅館・セントラルキッチン・給食委託で、厨房に稼働していない時間がある

✅ 売上ではなく、最後まで足した数字で判断したい


∞Deliciousでは、他社から提案を受けている方の収支の検算もお受けしています。提示されたシミュレーションをそのままお持ちいただければ、4行が入っているかを一緒に確認します。そのうえで、自社の厨房ならいくら残るのかを計算しますので、お気軽にご相談ください。

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※本記事について

引用した数値は、いずれも公開されている記事・サービス情報にもとづく引用および試算です。ロイヤリティ・サービス利用料は業界で公開されている一例であり、特定企業の実際の条件を示すものではありません。特定の企業の姿勢を批判する意図はなく、公開情報の突き合わせによる検証を目的としています。自社の数字(月商150万円、貢献利益率41.5%)は6ヶ月の運営実績にもとづく実測値ですが、立地・商圏により結果は変動します。

関根和樹(株式会社8Delicious 代表取締役)
17歳から飲食の現場に立ち、飲食店経営とコンサルティングに従事。5年で139名の事業者を支援。自身の店で遊休厨房を使ったデリバリーを実証し、貢献利益率約45%を確認。
主な事業:コンサルティング/飲食業/弁当事業/ケータリング事業/広告運用事業/不動産事業

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